なぜ「はだし感覚(ベアフット)なのに、ちゃんとしたドレスシューズ」がなかったのか

「かっこいい靴を履くか、心地よい靴を履くか」。この二択で消耗している人は、想像以上に多いのではないでしょうか。
Birchburyというブランドは、まさにこの二択に本気で悩み、そして本気で嫌気が差した一人の青年から始まりました。今日は、その少し恥ずかしい――けれど誰かの背中を押すかもしれない――創業のいきさつをお話しします。
サンダル育ちの大学生、機械工学を学ぶ
Birchburyの創業者であるMatthew Tranは、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で機械工学を専攻していた、ごく普通の学生でした。カリフォルニアという土地柄もあり、日常の足元はほとんどビーチサンダル。授業にも、友人との外出にも、とにかくサンダルで済ませる生活を送っていたといいます。

「トレイルに行くときでさえ、いつもサンダルを履いていた」――Matthew本人談
足にとって窮屈さのない、自由な日々。しかしこの快適な生活は、彼が30歳に近づくにつれて、少しずつ立ち行かなくなっていきます。
「ちゃんとした靴」を買うたびに、足が悲鳴を上げた
デートの場にサンダルで現れるのは、さすがに格好がつかない――。そう感じ始めたMatthewは、「ちゃんとした靴」を探し始めます。まずはALDO(※カナダ発のプチプラシューズブランド)の革靴を購入。しかし、履くたびに足が痛む。次にCole Haan(※アメリカ発のドレスコンフォートシューズブランド)を試しますが、これも同じく痛い。
「材料の良いものを選べば違うはずだ」と、今度は思い切って400ドルのMagnanni(※スペインの高級ドレスシューズブランド)のレザースニーカーに手を伸ばしました。価格に見合う上質な素材ではあったものの、結果は変わりませんでした。履くたびに痛む足。まるでお金をトイレに流しているような感覚だった、とMatthewは振り返っています。
何が悪いのか。原因を突き止めるべく自分の足と靴を見比べた彼が辿り着いた答えは、拍子抜けするほどシンプルなものでした――「つま先の部分(トウボックス)が、どの靴も一様に狭すぎる」。
ベアフットシューズには出会えたが、今度は「作り」と「見た目」で詰んだ
原因が分かれば、次に探すべきは「つま先の広い靴」です。この探求の先で、Matthewは「ベアフットシューズ」というジャンルに出会います。ワイドトウボックスとゼロドロップ(かかとの高さがゼロの、フラットなソール)を特徴とするこのジャンルは、足に合うという点ではまさに理想的でした。
ただし、当時見つかるベアフットシューズには、判で押したように同じ3つの問題がついて回りました。①派手なロゴや奇抜な配色で、見た目がそもそもダサいこと。②「ヴィーガンレザー」と称した合成皮革が多く、作りが安っぽく感じられること。③伝統的な靴作りの製法をきちんと踏襲していないこと。選択肢が悪いと分かっていながら、Matthewはその現実を受け入れ、我慢して使い続けるしかありませんでした。
ファッションカンファレンスでの、忘れられない一言
転機は2019年2月23日、アトランタで開催された「Menfluential」(※メンズのファッション・ライフスタイル系YouTuberたちが集まる、アメリカ最大級のインフルエンサーメディアカンファレンス。Matthewは当時30万人の登録者を持つYouTuberでした)で訪れます。会場で、あるエグゼクティブコーチが、Matthewの足元を見て一言、こう言い放ちました。
「それ、ちゃんとしたドレスシューズじゃないよね」
しかも、他の参加者たちの前で。大人になってから言われる「その靴、何?」――そんな一言でした。その場では笑ってやり過ごしたMatthewでしたが、その夜、一人ホテルの部屋で、彼は自分自身にこう誓います。

Menfluential Atlantaにて。「ちゃんとしたドレスシューズじゃない」と言われた、まさにその靴を履いている一枚
「自分の手で、心地よいドレスシューズを作ろう。安っぽく見えないように。そして、最高の素材を使おう」
この誓いこそが、のちにBirchburyの看板モデルとなる「Brenston」誕生の原点です。
エンジニアの血が騒いだ――それなら、自分で作ればいい
市場に無いなら、自分で設計すればいい。機械工学のバックグラウンドを持つMatthewにとって、それは決して突飛な発想ではありませんでした。アトランタから帰った彼は、すぐに靴の設計に取りかかります。
最初に形になったのは、ワイドトウボックスとゼロドロップという機能を持つレザースニーカー「Bramford」でした。驚くべきことに、Bramfordはアメリカに商品が到着するよりも先に、予約段階で完売してしまいます。「見た目は普通なのに、つま先だけは自由」という一足を、Matthewと同じように待ち望んでいた人が、想像以上にたくさんいたのです。
そして、あの誓いを果たす――Brenstonの誕生
Bramfordの手応えを受け、Matthewはあの夜ホテルの部屋で立てた誓いに向き合います。スニーカーではなく、正統派の「レザードレスシューズ」そのものに、ワイドトウボックスとゼロドロップを持ち込んだモデル「Brenston」の開発です。
ここでようやく、アトランタで指摘されたあの一言への、本当の意味での回答が完成しました。オフィスにも、商談にも、デートにも自信を持って履いていける、正真正銘の「ちゃんとしたドレスシューズ」です。
10万足以上に選ばれるブランドへ
2019年の創業から今日まで、Birchburyは世界中で10万足以上を届けてきました。弁護士、レストランマネージャー、整体師――一日中、足を使う仕事に就く人たちを中心に、口コミで支持を広げています。
「かっこいい靴か、心地よい靴か」。この二択に、Birchburyはもう答えを出しています。Birchburyはこの夏、いよいよ日本に上陸します。
Matthew Tran(マシュー・トラン)
Birchbury創業者。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で機械工学を専攻。学生時代からYouTubeチャンネルを運営し、登録者数30万人超まで成長させた経験を持つ。2019年にBirchburyを創業し、現在までに世界で10万足以上を届けている。
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※本記事は、Birchbury本国サイト(birchbury.com)の関連コンテンツを参考に、事実関係を踏まえて日本語で新たに書き起こしたオリジナル原稿です。逐語訳ではありません。